『栄養』について

川久保 悠

今回は『栄養』について書きたいと思います。

 

正しい『栄養』の知識は、子供のよりよい成長への大切な要素です。

 

先日のオサムトレーナーの分子栄養学教室の内容をベースに、栄養学のポイントとなる部分を出来る限り分かりやすくまとめてみました。

 

皆様のこれからの食生活に是非活かしていただければと思います。

 

それではまず、人間の体を作っている栄養素から見ていきましょう。

 

人間の体を作っているのは、タンパク質やビタミン、ミネラルといった栄養素です。

十分な栄養を取らずに、健康な体は作れません。

同時に、摂取を減らすべき栄養素もあります。

それが糖質です(糖質=炭水化物から食物繊維を除いたもの)

医療や栄養学においては、「かつて常識であったことが今では非常識」というケースが少なくありません。

その代表的なものが「バランスのよい食事」です。

これまで日本では「炭水化物6割、タンパク質2割、脂質2割」のエネルギーバランスで食事すべきだとされてきました。

病院食はおおむねこのバランスで献立が作られています。

ですがこのバランスは、医学的、科学的な裏付けはなく、米を主食とする日本人の食習慣から決められたものです。

つまり、栄養学や病気の研究が進んだ今でも医学的、科学的根拠のない栄養バランスが国レベルで唱えられています。

 

「カロリー」についても、すでに過去の遺物といっていい栄養の指標といえます。

そもそも、カロリーはある食品を燃やしたときに水の温度が何度上げられるかという数字にすぎず、体内の消化・吸収や代謝とはまったく関係がない数字であり、栄養とも無関係です。

200kcalと肉200kcalを比べたとき、どちらも同じカロリーですが、含まれる栄養素は全く違います。

米は口に入れば砂糖と同じくほぼ糖質のみ。

対して肉はタンパク質、脂質、ビタミンなど重要な栄養素を含みます。

ところが、カロリーという数字の上では同じエネルギーを持つ食品である、となってしまうのです。

 

炭水化物で6割のエネルギーを賄うという考え方からも分かるように、「糖質は必須」という常識も根強く残っています。

人間は糖質を取らなくても、タンパク質や脂質を摂取していれば、体内でブドウ糖を作り出せます。

これは「新糖生」と呼ばれるものです。

糖質は人体において、決して必須なエネルギー源ではないということを意味します。

 

「脂質は体に悪い」という考えも広くまかり通っていますが、コレステロール(脂質)の摂取基準は、日本でも2015年に撤廃されました。

脂質を取っても心臓や血管に何の影響もないことが明らかになったからです。

 

従来の考え方 糖質を取らないと頭も体も働かない。カロリーが高いと太る。野菜が多いとヘルシー。

正しい考え方 糖質が生活習慣病の原因で、頭も鈍らせる。カロリーに根拠はない。タンパク質と鉄を最優先に取る。

 

人間の体は、自分が食べたもので出来上がっています。

ということはどんな体になるかは、何を食べるかにかかっているということです。

ところが、現代の日本はご飯、パン、スナック菓子などが溢れていて、気を付けていないと確実に糖質を取り過ぎてしまう環境です。

 

先にもお伝えしたように「炭水化物6割、タンパク質2割、脂質2割」というのがこれまで理想とされてきた栄養バランスです。

ご飯が主食のどの家庭でも食べられている食事(例:ご飯、お肉、キャベツの千切り、味噌汁、煮物、フルーツ)

一見、何の問題もないように見えますが、献立に含まれるトータルの糖質量は約100g1個あたり糖質3gの角砂糖に換算すると、約33個分になります(ご飯/茶わん1杯 = 糖質/約55g/角砂糖約18個分)。

一度に32個の角砂糖は食べれませんが「栄養バランスの良いとされていた食事」だと食べることができてしまう、、これが、食事の落とし穴です。

 

わたしたちは、小さいころからご飯やパンといった主食をしっかり食べる食生活が良いと家庭や学校で教えられ、それを当たり前だと思ってきました。

お弁当を思い浮かべてください。

半分くらいご飯を入れて、残り半分くらいがおかずといったお弁当が多いでしょう。

ほぼ糖質オンリーのご飯がギッシリ詰まっていることを考えると、やはり糖質は6割かそれ以上を占めています。

摂取する食べ物の6割が精製された米やパンになると何が起こるか、、、一つは糖質の過剰摂取、もう一つは栄養失調です。

 

先にお伝えしたように、糖質は直接的に血糖値に影響を与える唯一の栄養素です。

過剰に摂取することで急激な高血糖を起こし、糖尿病や動脈硬化のリスクを高めます。

そして、栄養についていえば、精製されたお米や小麦粉は、ビタミンやミネラルといった重要な栄養素が削ぎ落とされた、いわば純度の高い糖質です。

たとえ甘くなくても、喉を通り過ぎれば砂糖と同じです。

1日に食べる食品のうち、半分以上が糖質になれば、その分、他の重要な栄養素であるビタミンやミネラル、タンパク質、脂質が取れなくなります。

ちなみに、必須アミノ酸(タンパク質)、必須脂肪酸(脂質)はありますが、「必須糖質」というものはありません。

重要性でいえば、圧倒的にタンパク質や脂質が必要なのです。

 

先にご紹介したような「従来のバランスの良い食事」は血糖値に異常を起こし、健康になるための栄養が決定的に不足しています。

人間の体の約6割を占めているのは水分、約2割を占めているのは、タンパク質です。

筋肉も内臓も血液も髪も皮膚も、そして骨も全てタンパク質でできています。

タンパク質と脂質が体に満たされていると、糖質を取りたい、という欲求自体が徐々になくなっていきます。

これは人間のエネルギー代謝に関係しているのですが、栄養失調が「糖質依存症」を引き落としていることが多々あります。

必要な栄養素が足りなくなると、早くエネルギーになる糖質を体は強く欲するようになります。

 

一般的な食生活をしている現代の日本人に決定的に足りていない栄養素がタンパク質です。

日本人の99.9%はタンパク質不足と言われています。

1日に取るタンパク質の目安は、体重の1kgあたり1g

例えば30kgの子供なら30gが最低量となります。

サッカー選手や運動量の多い子供はこの1.52倍のタンパク質が必要とされています(*同じタンパク質でも、植物性タンパク質豆類などは吸収率が低いので、動物性タンパク質を取ることをお勧めします)。

 

プロテインスコア

1 鶏卵 スコア/100

2 サンマ スコア/96

3 いわし スコア/91

4 豚肉 スコア/90

5 かじき スコア/89

6 あじ スコア/89

7 鶏肉 スコア/85

8 チーズ スコア/83

9 牛肉 スコア/79

10 牛乳 スコア/74

*鶏卵155g/タンパク質量7.2g、豚細切れ肉100g/タンパク質量12g、鶏もも肉100g/タンパク質量18g、牛肩ロース100g/タンパク質量15g

 

上の表は「プロテインスコア」と呼ばれるもので、タンパク質の品質を評価する指標です。

タンパク質を構成するアミノ酸の中でも重要な9種類の「必須アミノ酸」がバランスよく含まれている食品ほど数値が高くなっており、その中で最も理想的なタンパク源は卵です。

お値段も経済的な卵を積極的にタンパク質として取り入れましょう。

 

脂肪をガソリンにして、体のエネルギーを生むエンジンを効率的に働かせるとき、必須になるのが鉄です。

ところが、鉄が欠乏すると、今度は糖質のみをガソリンにする違うエンジンに切り替わってしまいます。

すると、体が糖質を強烈に欲するようになってしまうのです。

そのため、鉄欠乏貧血の人は、多くの場合で自分の意志で糖質の過食が止められない「糖質依存症」になっています。

もし、甘いものを食べることが止められない子供がいたら、意志が弱いのではなく鉄不足の可能性が大いにあります。

意志を鍛える前にしっかりと鉄を体に満たしてあげる必要があります。

「鉄不足」=「糖質依存症」

気を付けましょう。

 

「脂質をとると太る」というイメージは誰もが持っていると思いますが、実は、肥満に直結するのもむしろ糖質の取り過ぎです。

糖質を取ると、血糖値を下げるためにインスリンが分泌されます。

このインスリンの働きによって、脂肪細胞に血糖が取り込まれます。

そして太ります。

インスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれているくらいです。

それに、脂質は本来、エネルギーとして使われるもの。

ところがインスリンが体内に大量に存在していると、内臓脂肪として蓄えられて、エネルギーとして使われなくなってしまうのです。

糖質をとってインスリンが大量に分泌されていると、脂肪が燃えなくなります。

糖質を取ることによって、何重にも「脂肪を燃やす」働きにブレーキがかかってしまうのです。

肥満の原因は、脂質ではなく糖質です。

 

一般に、「脂っこいものを食べると胃がもたれる」イメージがあるかもしれませんが、脂質より強烈に胃に負担をかけるのも糖質です。

なぜなら、糖質には胃の動きを止めてしまう作用があるからです。

これを「糖反射」と言います。

ご飯やパンなどの糖質が主成分となる食品を取ると、約5分間胃の動きが完全に止まります。

その後も胃の動きは抑制され続け、糖質が居座り続けるために胃は胃酸を出し続けます。

すると消化器の内部が傷ついて、逆流性食堂炎を引き起こすこともあります。

 

おかゆやうどんは消化がいいイメージがありますが、糖質の塊なので同じく糖反射が起きます。

「体の具合が悪いときは消化の良いおかゆ」は迷信です。

かえって胃腸に負担をかけます。

ちなみに、肉は約30分で胃で消化されなくなります。

卵やヨーグルトもご飯やパンよりもずっと消化の良い食品といえます。

 

筋肉や骨、血管や皮膚、粘膜などあらゆる体の部位の材料になるのは、タンパク質です。

過剰な糖質が、体内のタンパク質を劣化させることはあまり知られていません。

糖質を取りすぎて高血糖値になると、余分なブドウ糖がこのタンパク質にくっついてしまう現象が起きます。

これを、「糖化」といいます。

同時に、インスリンの作用で細胞内には活性酸素が生じ、体中で「酸化」も起こります。

酸素が体内のタンパク質などとくっついて酸化してしまうことを「体のサビ」といい、糖化は「体のコゲ」といわれます。

タンパク質が糖化すると、その弾力や活性を失って劣化するため、体の老化は一気に加速します。

例えば血管で糖化が起こると、張りや弾力が失われてたるみやシワが増えてしまうことに。

つまり、糖質を取れば取るほど老化が進んでしまうというわけです。

甘いもの好きの人は、人一倍早く見た目も中身も老けていくということです。

また、甘いものをあまり食べない人でも、糖質を取りすぎてしまっている場合は要注意です。

 

「ご飯を食べないと力が出ない」「炭水化物抜きでは頭が働かない」。

こうした考えが非常に根強い人は多くいます。

そして、自分が糖質依存症であることに気が付いていない人も同じぐらいいます。

糖質が恐ろしいのは、中毒性があること、精神的な依存を引き起こしやすいことです。

体に悪いと分かっていても、糖質を抜くのは簡単ではありません。

先にもお伝えしたように、こうなると自分の意志で糖質を断つことは至難の業です。

しかも、糖質依存症の人はタンパク質やビタミン、ミネラルが不足している栄養失調状態であることがほとんどです。

体を動かすエネルギー代謝が糖質頼みの非効率的な回路にらなってしまっているため、細胞が糖質しか使えない状態となり、強く渇望するようになってしまうのです。

糖質が精神的にも肉体的にも依存性が高い「マイルドドラック」と言われるのはこのためです。

 

ただでさえ糖質だけでも危ないのに、さらに危ない添加物がセットになっていることが多々あります、、これが、糖質の危険度をより高めています。

代表的なものが、「コーンシロップ(異性化糖)」です。

「フルクトース」とも呼ばれるトウモロコシのでんぷんを分解して糖に変えたもので、甘味が強くて値段が安いことから、さまざまな加工食品の甘みづけに使われています。

原材料に「ブドウ糖果糖液糖」や「果糖ぶどう糖液糖」と記されているのが、このコーンシロップです。

これが厄介なのは、通常の糖質と違って、食べても一切満腹感が得られないので大量に摂取していまうところ。

そのため、肥満や高血圧、糖尿病のリスクを高めることから、多くの国で使用制限が広がりつつあります。

ところが、日本では未だ野放しの状態です。

「コーンシロップ(異性化糖)」には気を付けましょう。

 

食後に眠くなるのは「消化器に血液が流れ込むため」とよく言われますが、こちらも実は糖質と深い関係があります。

昼食でパスタやうどんなどを糖質過多なものを食べると、血糖値が急上昇します。

すると、脳の快楽中枢が反応して快楽が生じますが、このときに強い眠気も感じるのです。

これによって、脳の働きが一気に低下します。

さらに血糖値が急上昇してインスリンが大量分泌されると、今度は血糖値が急降下します。

インスリンの分泌は個人差がありますが、食後30分をピークに12時間の間、多量に分泌されます。

すると、血糖値が急上昇したときの多幸感とは正反対の「イライラ感」が生じるのです。

つまり、糖質を取っていると快楽感とイライラのジェットコースター状態になるのです。

試合で子供たちの昼食後のプレーパフォーマンス低下がよく見られますが、この糖質過多によるインスリンの大量分泌が原因と言えます。

試合での昼食(お弁当)は糖質の多い白米やパンは控え、卵やバナナ、プロテインバーなどのより消化のよい、より上質でエネルギー豊富な食品を食べるようにしましょう。

昼食後最も注意しなくてはならない敵は、相手チームではなくインスリンかもしれません。

また、糖質過多から起こる鉄やタンパク質不足は、うつの原因にもなります。

くれぐれも糖質過多には気を付けましょう。

 

日本は糖質無制限の危険地帯と言われています。

血糖値を直接上げるものは糖質しかないにもかかわらず、1日の6割ものエネルギー量を糖質で取るように指導してしまっているからです。

海外では多くの国で糖の摂取の抑制する動きが出ています。

イギリスでは政府が2017年に全業界に対しての砂糖含有量の20%削減を呼びかけ、2018年からは「砂糖税」が定められています。

「砂糖税」はヨーロッパ各国で広がりつつあります。

健康のために糖質を制限するというのは、先進国の常識になりつつあります。

 

ご飯やパン、麺類といった糖質を控える食事となると、何を食べたらいいのでしょうか。

まず土台になるのが、タンパク質と脂質です。

糖質に変えてエネルギー源にするべき栄養素です。

体を動かすためのエネルギーを生むためのエンジンを動かすガソリンは、糖質よりも、タンパク質や脂質を使った方が約19倍も効率的と言われています。

 

また、先にも述べた通り、特にタンパク質は体のあらゆる部位の材料になるものなので、最重要栄養素です。

タンパク質がしっかり取れていないと、消化器や消化液も働きを鈍らせるので、あらゆる栄養素がしっかり吸収できなくなります。

栄養の土台を、糖質からタンパク質と脂質に転換すること。

つまり、タンパク質と脂質は最も量をとるべき栄養素であるということです。

 

次に大切なのが、鉄です。

日本人のほとんどは鉄不足であり、とりわけ女性の9割は鉄欠乏症貧血であると言われています。

鉄の不足がエネルギー生産を鈍らせたり、糖質依存症を加速させたりすることは、先にもお伝えした通りです。

ミネラルの一種である鉄ですが、これだけは特別に重要な栄養素です。

 

エンジンを動かす過程では、さまざまなビタミンやミネラルが必須です。

ところが、過剰摂取した糖質を分解するためにこれらのビタミン、ミネラルが消費されたり、精製された穀物が主流になったことなどから、現代人は慢性的にビタミン、ミネラル不足状態になっています。

「普通の食事」ではビタミン、ミネラルは絶対的に不足してしまうことを忘れないようにしましょう。

食事のみで栄養を満たすことは難しく、食費も掛かります。

より経済的なサプリメント等の利用をお勧めします。

 

最後に、女性の糖質コントロールについて。

女性の場合は、鉄を体に満たしてから糖質制限を始めるとよりスムーズに行えます。

というのも、女性のほとんどが鉄欠乏性貧血だからです。

これまでもお伝えしてきたように、鉄が不足していると、糖質だけをガソリンにするエネルギー回路になってしまいます。

糖質メインの回路は燃費が非常に悪く、すぐにエネルギー不足になるため、糖質への欲求が強くなります。

すると糖質を過食してしまい、さらに鉄が不足する. . . という悪循環に陥ってしまいがちです。

この負のサイクルを打ち切るためには、まず鉄をしっかり取ること。

そして、鉄と結びついて体内に鉄を貯蔵するタンパク質も同時に取ることが必要です。

鉄とタンパク質をしっかりと摂取しましょう。

 

日本の食文化を客観的に見渡すと糖質の過剰摂取、鉄の欠乏は絶対的です。

 

子供たちがサッカーをプレーするにあたって、糖質の過剰摂取が招くインスリンの過剰分泌、鉄の欠乏が招く糖質依存症などには特に注意が必要です。

 

『栄養』を正しく理解して、正しい食生活を心がけましょう。

 

少しでも子供たちのよりよい成長の参考になれば嬉しく思います。

 

 

YUコーチ