『目標』について

川久保 悠

『目標』辞書には〈そこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの。行動を進めるにあたって、実現・達成をめざす水準。〉とあります。
わかりやすく表現すると、『目指す目的地』となります。
『目標』にも正しい『目標』と間違った『目標』がありますが、正しい『目標』とはどのような『目標』でしょうか?
『目標』設定で大切なことは、『目標』とすることが『絶対的』であるか。『目標』が『絶対的』であって『相対的』でないことが大切になります。
*『絶対』辞書 : 〈他に比較するものや対立するものがないこと。また、そのさま。他の何ものにも制約・制限されないこと。また、そのさま。〉
『絶対的』とはわかりやすく表現すると『自分で決められること』となります。
*『相対』辞書 :〈他との関係の上に存在あるいは成立していること。〉
『相対的』とは『自分で決められないこと』『自分も含む全体で決まること』になります。
そこでサッカーの試合の『目標』の例を上げてみましょう。
サッカーの試合の『目標』としてよく上がることが『勝つ』『ゴールを決める』だと思います。
『勝つ』は『絶対的』でしょうか?
試合はどんなにベストを尽くしても負けることがあります。『勝つ』は『相対的』です。
『ゴールを決める』は『絶対的』でしょうか?
どんなに多くの決定的ゴールチャンスを作くり、どんなに素晴らしいフィニッシュをしても相手ゴールキーパーが神がかっていればボールは入りません。『ゴールを決める』も『相対的』です。
ではサッカーの試合での『絶対的な目標』とは?
どこまでが『絶対的』でどこからが『相対的』になるのでしょうか?
INDEPENDIENTE JAPANの試合における『目標』は、『より多くの時間ボールをポゼッションする』→『より広く、より速く、より多くボールを動かす』*ドリブルやその他個人技での打開も含まれる。→『より多くのゴールチャンスを作り出す』となり、最も先の『目標』は『より多くのゴールチャンスを作り出す』となります。
サッカーの基本概念として、『攻めるチームは11人で攻め。守るチームは9人でマークする。』(*攻めるチームはキーパーも含む11人。守るチームはキーパーはゴールを守るため、マークにつける選手は10人。また最終ラインに1人余らせることが守備の基本戦術になるので、マークにつける選手は9人となります。)とあるように、サッカーは実際に攻め11人、マーク9人の『11対9』で行われます。
『11対9』を部分的に切り取ると『4対2』『4対3』『3対1』『3対2』となり、『4対2』『4対3』『3対1』『3対2』の数的不利な条件でボールを奪える守備戦術は現時点で存在しません。
そのため、攻撃側にプレーのプロセス『認知/状況の把握・理解』→『判断/最善な解決策の判断』→『実行/実践』にミスがなければ『4対2』『4対3』『3対1』『3対2』の数的有利(優位)な条件でボールを奪われることはないということになります。(*例外として守備の身体能力が大きく上回る場合はボールを奪われてしまう可能性があります。ただし身体能力の決して高くないイニエスタ選手を例にとってもわかるようにサッカーの本質は『認知/状況の把握・理解』→『判断/最善な解決策の判断』→『実行/実践』であって、身体能力ではありません。)
そのことから数的有利(優位)で進めることのできる、『より多くの時間ボールをポゼッションする』→『より広く、より速く、より多くボールを動かす』→『より多くのゴールチャンスを作り出す』までは『絶対的』だと定義できます。
そして、『ゴールを決める』への最後のプロセスに当たる『シュート・フィニッシュ』では1つのゴールを1人のキーパーが守り、1人の選手がシュートを打ち、数的有利不利はないことから、そこに『絶対的』な定義はなく『相対的』となります。
よい例がペナルティーキックです。ペナルティーキックには数的有利不利がなく、入る、入らないの『絶対的』定義はありません。たとえ最高のキックをしたとしても、読まれれば止められてしまいます。
試合中のプロセスにおいて正しい『絶対的な目標』と定義できるのは『より多くのゴールチャンスを作り出す』までとなり、『ゴールを決める』『勝つ』は『相対的な目標』となります。
『ゴールを決める』『勝つ』という『目標』は、コインを投げて『表』が出ることを『目標』にすることと同じように『相対的』なことで、『相対的』な『目標』は『迷い』を生み、『迷い』が『恐怖』を生みます。
よくサッカー選手が陥る悪循環のパターンで、サッカーにおいて『恐怖』は致命的条件です。
また、多く耳にする『結果が全て』の『結果』も哲学的に『相対的な結末』と表現されるように、最も『相対的』なことの1つです。
『勝つ』『ゴールを決める』『結果』はより魅了的で最終的な『目標』に見えますが『相対的』であることを理解することが大切です。
正しい『目標』『絶対的な目標』は『自信』『勇気』を与えてくれます。
子供たちにはよりシンプルで正しい『目標』と共に、人生の主人公として勇敢に歩んでいってもらいたいと思っています。
最後に、
『サッカーはシンプルなだけではなく、生きる方法ですらあるということ。このことを多くの人がわかれば、もっと楽しくなる。ピッチ内外において。』
尊敬するヨハン・クライフが残した言葉です。
サッカーの正しい『目標』が、楽しい人生の『目標』に繋がれば嬉しく思います。

 

YUコーチ